店舗物件を決めて図面を書き始めた段階から工事の準備がスタートします。
一般的に工事業者である工務店にオーナーがカギを渡す日を着工日といい、工務店がカギを返す日を引渡し日と言います。
実を言いますとこの工事期間中には大なり小なり、何らかの予定外となるアクシデントが、どんな飲食店の場合にも数多く発生しています。
弊社はこれまで1500件を超える、数多くの飲食店の開業に立ち会ってきました。
その経験上からトラブルが発生するかも知れないいくつかのポイントを事前に見抜くことが出来るようになりました。
ではこれからトラブルを未然に防ぐことの大切さをお伝えしていこうと思います。
まず結論を先に述べるなら、トラブル発生前と発生後では対処のしかたが大きく異なるという話です。
トラブルが発生する前に様々な問題を予見して、慎重に工事を進める業者さんの場合は、心配は少ないです。
反対にトラブルがチラホラ見えていても、約束された工事期間を優先し、工事をドンドンすすめる内装業者さんの場合は、工事完了後や数ヶ月後または数年後に問題が発生することもあります。
問題が発生する前に出来ること、それはトラブル自体を予想し、事前に問題を回避するという方法です。
しかし実際は、様々な問題が工事完了後に発覚します。
工事が終わり無事オープンを迎え、店舗の運営が始まった後で発生したトラブルは、不具合箇所に対して行う応急処置しか対処の方法がないのです。
営業をいったん停止して、日数を何日もかけて再度徹底した工事をするなら話は別ですが、ほとんどの場合は、不都合なまま店舗運営を続けて行くしか方法がなく、結果的に作業に不都合をかかえ、効率が悪いままのオペレーションとなったり、サービス低下などの影響が出てしまいます。
こういった観点から考えても一番の解決策は、「問題を未然に防ぐこと」が望ましいといえるでしょう。
ではこれからよく発生しやすいトラブルをご紹介します。
厨房スペースを有効活用するために、狭い場所に必要な厨房機器を一定台数設置する必要があります。
この時に予定のスペースが少しでもせまかったら、厨房機器は入らないので、設置は出来ません。
それが、たとえたったの数ミリの寸法違いであってもです。
対処方法
様々な厨房機器がありますがステンレス製品の商品があります。たとえば作業台、シンクなどです。
これらは自由自在の寸法で作成することができます。
さらに製作から納品まで5~7日です。
そこで私達は納品予定の約10日前後まえに現場にむかい、工事されている現場の寸法の実寸をはかり納期に間に合うようにギリギリのタイミングで製作を始めます。
現場にむかい実寸をはかること。
このひと手間を惜しまずに行うことで、予定していたスペースに入らないまたは大きな隙間ができる、という問題を事前に解決できるのです。
ちなみにオーダーで作成する作業台やシンクですが金額は特殊な形状でない限り、汎用品とまったく同額です。
たとえ設置場所のスペースが十分に確保されていたとしても搬入経路に問題があれば機器を運び込むことが出来ません。
通路幅が足りないケースや工事の進行によって後で作られた壁やカウンターなどの設置物も含めた通路の障害物の存在などが実際に多々あります。
新品を販売する厨房メーカーの営業担当者は、設置完了まで見込んだアドバイスを提案してくれるのであまり心配いりませんが、販売のみを目的とする中古品販売店は設置することまでは、ほとんど考慮いたしません。
さらにどんな理由があっても返品は出来ない場合がおおいです。
オーナー様自身が中古品販売店などで、購入された場合などは特に注意が必要です。
対処方法
このトラブルを防ぐために弊社は着工時点で搬入経路の確保を工務店様に依頼いたします。この時に必要なのが厨房図面です。
図面をもちいて工務店と綿密な打ち合わせを行います。
さらにその後も施工された店舗の状態を確認するために搬入前日に現場へ出向いて最終確認をします。
この様なチェック体制をしているため弊社の受け持つ案件では納品時のトラブルは一度も発生したことがありません。
電気、ガス、水、ダクト(空調含む)などの設備は最大使用量(容量)の確認を工務店さんに依頼してください。
軽飲食店と重飲食店などオープンする飲食店の業種によって求められる設備の容量は使用する厨房機器によって大きく違ってきます。
ガス設備配管ひとつをとっても開業する飲食店の業種によって必要なガス管のパイプ太さ(つまり必要量)は違います。
この様な注意点はガスだけではなく電気の容量や水道、排水、空調設備、ダクトの容量にもあてはまります。焼肉店やお好み焼き店などの飲食店で入口の扉がおもく開きにくかった経験はありませんでしょうか?
吸気と排気のバランスが悪いために入口の扉が空気のながれに逆らう状態だった可能性があります。居酒屋に入った瞬間、店内が煙でいっぱいだった経験はありませんでしょうか?
吸気が不足していて排気がおいついていない可能性が高いです。
空調関係の工事はエアコンの効き具合も含めて空気の流れに関する設備すべてに当てはまります。
目にみえない空気ですが飲食店の工事にとっては重要な確認事項といえます。
とくに居抜き物件を契約されたオーナー様は、以前に入居されていた店舗の業種とご自身が開業される店舗の業種の違いを確認しなければなりません。
喫茶店のような軽飲食店を経営されていた居抜き物件から、中華料理のような重飲食店のお店を開業されるなら、必ず追加の設備工事依頼を工務店にしましょう。
対処方法
居抜き物件であるなら以前のお店の情報を不動産屋から聞いてください。
そしてあらかじめ厨房図面を作成し工務店にお渡ししましょう。
厨房図面には電気、ガス、水道等の厨房内で必要な厨房機器すべての設備容量が記載されています。
工務店に渡すだけで問題はほとんど回避できます。
厨房機器は在庫品が多いのですが、受注生産品や、まれに欠品している時もあります。
この場合は納品までに1カ月以上かかることもありますので、工事の進捗度合いやオープン日に影響を与えてしまう恐れがあります。
じゅうぶんな確認と注意が必要です。
通常であれば引渡しの約1週間前に厨房機器の搬入が行われます。
私達にご注文いただいた場合ですと、新品、中古品問わず、機器をただ置いて帰るのではなく、ガスや水道、電気などと厨房機器との接続や試運転による動作確認までいたします。
そうすることで安心してオープン当日を迎えていただけます。